Close

「入管問題とは民主主義の問題ではないか」平野雄吾『ルポ 入管』

11/14/2020 …… symptoms / signs

入管問題とは民主主義の問題ではないか」
平野雄吾『ルポ 入管』

筑摩書房
共同通信の記者である平野雄吾氏の『ルポ 入管』(ちくま新書)は、暴行に起因する志望者、ハンストの結果の餓死者、自殺者もでている「入管」の実態を明らかにする一冊。入管(入国管理局)とはどのような場所なのか、どんな人々が収容されているのかを、当事者とその家族へのインタビューも交えながら紹介している。


【所感】本年の3月、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)からトルコ国籍のクルド人、デニズさんが解放された。その際に開かれた記者会見では、入管で自らが受けた暴行の数々や、なんども自殺未遂をしたことを告発した。「入管難民法は、入管当局は強制退去の決まった外国人を速やかに送還しなければならないとし、直ちに送還できないときは送還可能なときまで入管施設に収容することができると規定している」と本書に記載があるように、入管とは「犯罪者」を収容する場所ではない。一時的に滞在する場所に鉄格子があることも、「懲罰房」(正式名称は「処遇室」)があることも、監視カメラがあることも、そして収容された人間を犯罪者のように扱うことも人権侵害にあたる。本初からは、さまざまな理由で日本で生活する人々を、日本という国家がいかに暴力的に扱っているかが、が見えてくる。様々な理由で日本やってきて、ここで生活をする人々がいる。しかし彼ら/彼女らは、その時その時の政治の/経済の都合によって翻弄されている。入管の問題は、他国からやってきた人々の問題ではなく、日本という国家の問題なのだ。(堀)

© 2024 臨床人文知 ThinkTank:環世界〔Umwelt〕